フレーミング効果とは?Webマーケティングで使える実践例4選と注意点

Webマーケティング

もし、あなたがプロジェクトの責任者で、部下からこんな報告を受けたら、どちらのチームが前に進みやすいと感じるでしょうか?

  • Aさん: 「この施策の成功率は80%です」
  • Bさん: 「この施策は、20%の確率で失敗します」

どちらも「全く同じ事実」を述べています。しかし、Aさんの報告はチームを前向きにさせ、Bさんの報告はチームを躊躇させるかもしれません。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

その答えが、行動経済学のもっとも有名で、かつ強力な概念の一つ、「フレーミング効果」です。

この記事では、このフレーミング効果の正体を解き明かし、Web集客やマーケティング、社内コミュニケーションにおいて、その力を倫理的かつ効果的に活用するための具体的な4つの処方箋を、事例とともに解説します。

■ フレーミング効果とは?「伝え方の枠」が印象を左右する心理

フレーミング効果とは、同じ情報でも、どのような「枠組み(フレーム)」で提示されるかによって、私たちの判断や選択が劇的に変わってしまう心理現象のことです。

これは単なる「言い回しのテクニック」ではありません。顧客の購買意欲を左右し、チームの重要な意思決定を歪めてしまう、無視できない心理の力学です。

先の例で言えば、

  • 「成功率80%」というポジティブなフレームは、「その8割の成功を確実にしたい!」という気持ちを後押しします。
  • 「失敗率20%」というネガティブなフレームは、「絶対に損したくない!」という損失回避の感情を強く刺激し、行動にブレーキをかけるのです。

顧客は、あなたがWebサイトで提示する情報の「フレーム」を通して、商品やサービスの価値を評価しています。そして、あなたのチームもまた、会議で交わされる言葉の「フレーム」を通して、プロジェクトの未来を判断していることを、忘れてはなりません。

あなたのビジネスに潜む「フレーミングの罠」

この「伝え方の罠」は、あらゆるビジネスシーンに潜んでいます。

  • Webサイトのキャッチコピー:
    • △「脂肪分10%含有のヨーグルト」
    • ◎「脂肪分90%カットのヨーグルト」
  • 価格の提示:
    • △「年間費用36,500円」
    • ◎「1日たった100円の投資で、専門家のサポートが受けられます」

後者の表現の方が、人の心を強く動かすことがお分かりいただけるでしょう。では、この効果を、私たちはどのように使いこなせば良いのでしょうか。


■ 顧客とチームを動かす「フレーミング」4つの実践フレーム

ここでは、フレーミング効果を実践的に活用するための「型」を4つ紹介します。

フレーム1:損失回避フレーム|「失う痛み」で行動を促す

人は「得たい」という欲求よりも、「失いたくない」という感情に強く動かされます。この心理は「損失回避性」と呼ばれ、行動経済学の根幹をなす重要な概念です。 (※この理論は、当ブログの別記事「Web戦略の成果を逃す『損失回避バイアス』とは?」でも詳しく解説しています。)

顧客が行動しないことで「何を失うのか」を明確に示し、行動を促します。

【Webサイトでの実践例】

  • 「本日を逃すと、この限定特典は二度と手に入りません」
  • 「このまま対策しないと、1年後には競合にシェアを15%奪われる可能性があります」
  • 「今すぐ始めないと、先行者利益を逃してしまいますよ」

フレーム2:ベネフィットフレーム|「得られる未来」で価値を伝える

商品の機能(スペック)そのものではなく、顧客がその機能を使うことで「どのようなポジティブな結果や感情を得られるのか(ベネフィット)」を具体的に描写します。

顧客が欲しいのはドリルではなく「穴」である、というマーケティングの有名な格言と同じです。

【Webサイトでの実践例】

  • スペック訴求: 「高性能プロセッサー搭載PC」
    • ベネフィット訴求: 「動画編集の待ち時間が半分に。あなたの創造的な時間が増えます」
  • スペック訴求: 「月間100GBまで保存できるクラウドストレージ」
    • ベネフィット訴求: 「PCの空き容量を気にせず、思い出の写真を好きなだけ保存できます」

フレーム3:価格提示フレーム|「心理的負担」を軽くする

価格の提示方法を工夫し、顧客が感じる心理的な抵抗感を和らげます。高額な商品ほど効果的です。

【Webサイトでの実践例】

  • 大きな単位を小さな単位に分解する
    • 「年間費用120,000円」 → 「月々たったの10,000円」
    • 「本体価格3,000円」 → 「1杯あたりわずか100円の本格コーヒー」
  • 価値あるものと比較する
    • 「月額5,000円の学習教材」 → 「週1回のランチを我慢するだけで、一生モノのスキルが手に入ります」

フレーム4:両面提示フレーム|「誠実さ」で信頼を築く

特に社内の意思決定や、高価な商材を検討している顧客に対しては、良い面ばかりを伝える(片面提示)よりも、メリットとデメリットの両方を正直に伝える(両面提示)方が、長期的な信頼につながります。

意図的に情報を偏らせることは不信感につながります。あえて弱点を先に開示することで、「この人は正直だ」という印象を与え、その後の提案の信頼性を高める効果があります。

【社内での実践例】 「この施策の成功率は80%です。裏を返せば、20%の失敗リスクもあります。そのリスクの内訳は…ですが、リターンを考えると実行価値は高いと判断します」

【Webサイトでの実践例】 「この商品は〇〇という優れた機能がありますが、一方で△△というデメリットもあります。△△が気にならない方にとっては、最高の選択肢となるでしょう」

■【警告】「伝え方の科学」を「顧客を欺く技術」にしないために

フレーミング効果は、その影響力の大きさから、倫理観を欠いた活用は顧客の信頼を著しく損ないます。これは、顧客を操作する技術ではなく、あくまで誠実なコミュニケーションを助けるツールであるべきです。

事実そのものを捻じ曲げることや、顧客に不利な情報を意図的に隠すことは、景品表示法違反にも問われかねない悪質な行為であり、長期的に見れば必ずブランドを破壊します。


■ まとめ:フレーミングとは、想いを届ける「翻訳機」である

フレーミング効果とは、単なる言い換えのテクニックではありません。

それは、自社が提供する本当の価値を、顧客やチームがもっとも理解しやすく、心に響く言葉へと変換する「翻訳機」のようなものです。

あなたのその素晴らしい商品やサービス、画期的なアイデアが、伝え方一つで正しく評価されないとしたら、それはあまりにもったいないことです。

ぜひ、この記事で紹介した4つのフレームを参考に、あなたの「伝え方」を見直してみてください。その誠実な姿勢こそが、信頼のもとで成果を上げる唯一の道といえるでしょう。

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