「求人媒体に高い費用を払って掲載したのに、応募がさっぱり…」
「うちの会社の魅力、どうして候補者に伝わらないんだろう?」
人事・採用担当として、このような悩みを抱えている方は少なくないでしょう。給与や休日などの条件が、競合他社に比べて著しく劣っているわけでもない。それなのに、なぜか自社の求人票はスルーされてしまう。
もしかしたらその原因は、会社の魅力が足りないからではなく、候補者の「無意識の判断」に働きかける「伝え方」にあるのかもしれません。
こんにちは。私は以前、事業会社の人事部で採用を担当していました。そしてかつての私も、あなたと同じように「応募が集まらない」という壁に何度もぶつかりました。
この記事では、そんな私の経験も踏まえ、行動経済学の「フレーミング効果」と「社会的証明」という2つの強力な武器を使い、あなたの会社の求人票を「応募したくなる求人票」へと劇的に改善する具体的なテクニックを、豊富な文例付きで解説します。
秘訣1:【フレーミング効果】「事実」を「魅力的な体験」に変換する
なぜ「事実の羅列」ではダメなのか?
まず、大前提として候補者は、あなたの会社の求人票を隅々まで熟読してはくれません。多くの求人情報の中から、一瞬で「自分にとって魅力的か」を判断しています。
その判断基準は、「年間休日125日」「月給25万円」といった単なるスペック(事実)ではありません。候補者が本当に知りたいのは、「その会社で働くことで、自分はどんなポジティブな未来(体験)を手に入れられるのか?」ということです。
行動経済学でいう「フレーミング効果」とは、同じ内容でも、どのような枠組み(フレーム)で提示されるかによって、受け手の印象や意思決定が大きく変わる心理効果のこと。この効果を応用し、単なる事実を、候補者の心を動かす「魅力的な体験」へと変換していきましょう。
文例で学ぶ!ポジティブ転換のコツ
【休日】「数字」から「過ごし方」へ
- Before: 年間休日125日
- After: 土日祝休みに加え、GW・夏・冬に年3回の長期休暇(それぞれ9連休取得実績あり)をご用意。海外旅行や趣味の時間など、プライベートも思いっきり充実させられます!
ポイント:「125日」という数字だけでは、具体的な休日のイメージは湧きません。「長期休暇で何ができるか」まで提示することで、候補者は「この会社なら、仕事もプライベートも楽しめそうだ」というポジティブな未来を想像できます。
【給与】「金額」から「成長ストーリー」へ
- Before: 月給25万円〜
- After: 未経験からでも月給25万円スタート。入社3年目の平均年収は550万円と、あなたの頑張りや成果が収入という形でしっかり反映される環境です。
ポイント:「〜」という表記は、上限が分からず不安を煽ることもあります。それよりも、未経験からのスタート額と、数年後のモデル年収を具体的に示すことで、「この会社で頑張れば、きちんと報われるんだ」という成長ストーリーと納得感を提示できます。
【仕事内容】「作業」から「価値・貢献」へ
- Before: 〇〇業界向けの法人営業
- After: 〇〇業界が抱える課題を解決し、お客様から「ありがとう」を直接いただける、社会貢献性の高い法人営業です。
ポイント:「何をやるか(作業)」だけでなく、「その仕事を通じて、誰にどんな価値を提供できるか(貢献)」を語ることで、仕事のやりがいや意義が格段に伝わりやすくなります。
秘訣2:【社会的証明】「この会社、信頼できそう」という安心感を醸成する
なぜ「第三者の声」が重要なのか?
あなたがレストランを選ぶ時、お店の公式情報だけでなく、口コミサイトの評価やレビューを参考にしませんか?それと同じで、候補者も「この会社、本当に大丈夫だろうか?」という不安を常に抱えています。
自分で自分のことを「良い会社です」と言うだけでは、その不安は解消されません。そこで重要になるのが、行動経済学における「社会的証明」です。これは、「多くの人が支持しているものは、きっと良いものに違いない」と判断する人間の心理傾向を指します。
求人票の中に、客観的なデータや社員の声といった「第三者のお墨付き」を盛り込むことで、「この会社は信頼できそうだ」という安心感を醸成し、応募への最後のひと押しできます。
文例で学ぶ!安心感の作り方
【職場の雰囲気】「曖昧な表現」から「具体的な光景」へ
- Before: 若手が活躍する活気ある職場です
- After: 社員の半数が20代で、役職やチームの垣根を越えた雑談も活発。分からないことがあっても、すぐに周りに相談できる雰囲気なので、あなたもきっとすぐに馴染めるはずです。
ポイント:「活気がある」はあまりに曖昧です。具体的な年齢構成や、コミュニケーションの様子が目に浮かぶような表現を使うことで、候補者は入社後の自分の姿をイメージしやすくなります。
【働きやすさ】「スローガン」から「揺るぎない事実」へ
- Before: 働きやすい環境です
- After: 育休からの復帰率は、過去3年間で100%を維持。フレックスタイム制を活用し、子育てと仕事を両立させている先輩社員も多数在籍しています。
ポイント:「働きやすい」というスローガンよりも、「育休復帰率100%」という客観的な事実の方が、何倍も説得力があります。具体的な制度と、それを活用している社員の存在を示すことが、信頼に繋がります。
【客観的データ】「自称」から「実績」へ
- Before: 研修が充実しています
- After: 実は、現在活躍するメンバーの9割以上が業界未経験からのスタート。独自の研修プログラム(3ヶ月間)を通じて、一人前のプロフェッショナルへと育て上げてきた実績があります。
ポイント:「充実」も主観的な言葉です。それよりも「未経験者の割合」や「研修期間」といった具体的な実績を示すことで、教育制度に対する本気度と信頼性が伝わります。
まとめ:小さな表現の工夫が、未来の仲間を連れてくる
今回は、求人票の応募を増やすための2つの秘訣として、「フレーミング効果」と「社会的証明」をご紹介しました。
- フレーミング効果:「事実」を、候補者がワクワクするような「魅力的な体験」として語り直す。
- 社会的証明:「客観的なデータ」や「社員の声」を示し、「この会社は信頼できる」という安心感を作る。
求人票は、単なる募集要項ではありません。あなたの会社が、未来の仲間と初めて出会うための、大切な「ラブレター」です。
この記事を読み終えたら、ぜひ、今掲載している求人票を見直してみてください。そして、まずはたった一文からでも、今日ご紹介したテクニックを使って表現を工夫してみてはいかがでしょうか。
その小さな一歩が、これまで出会えなかった素晴らしい才能との出会いを引き寄せるかもしれません。