「最近、社員に覇気がない気がする…」 「飲み会やイベントで盛り上げようとしても、いまいち組織に一体感が生まれない」
従業員のエンゲージメントが低く、組織に活気がない状態は、経営者やマネージャーにとって深刻な悩みです。給与や待遇を改善しても、社員の「やらされ感」はなかなか消えません。
その原因は、社員が「やりがい」を感じるメカニズムを見過ごしているからかもしれません。
この記事では、行動経済学の「プログレス・プリンシプル」と「IKEA効果」という2つの知見を活かし、社員が自ら「この会社で頑張りたい」と思えるような、エンゲージメントの高い組織を作るための具体的な仕掛けを解説します。
仕掛け1:【プログレス・プリンシプル】「小さな進捗」こそが、最高のガソリン
人が仕事において最もやりがいを感じ、創造性が高まるのは、一体どんな時だと思いますか?
ハーバード大学のテレサ・アマビール教授の研究によると、その答えは「給与が上がった時」でも「目標を達成した時」でもなく、「仕事が少しでも前に進んでいると実感できた時」でした。これを、プログレス・プリンシプル(進捗の法則)と呼びます。
大きな成果や目標達成は、頻繁に起こるものではありません。しかし、「昨日より一歩進んだ」という小さな手応えは、日々の業務の中に無数に存在します。この「小さな進捗」に光を当て、社員自身に実感させることが、エンゲージメント向上の鍵です。
マネージャーができる「進捗」の可視化
- 「できたこと」を承認する 「あの資料、〇ページまで進んだんだね。ありがとう」 「先週より、お客様への説明がスムーズになったね」 結果だけでなく、日々のプロセスにおける小さな進捗を見逃さず、具体的に言葉にして伝えることが重要です。
- 週次で「進んだこと」を共有する チームミーティングの冒頭5分で、「今週、自分が進められたこと」を一人ひとり共有する時間を設ける。他者の進捗を知ることも刺激になり、チーム全体の士気が高まります。
仕掛け2:【IKEA効果】「自分で作ったもの」には愛着が湧く
IKEAの家具を、苦労して自分で組み立てると、既製品の家具よりも愛着が湧いた経験はありませんか?
このように、自分が手間や労力をかけたものに対し、人はより高い価値を感じる心理効果を、IKEA効果と呼びます。
これを組織運営に応用し、社員を「会社の決定に従うだけの存在」ではなく、「会社を一緒につくる当事者」として巻き込むことで、会社への愛着や貢献意欲を劇的に高めることができます。
社員を「当事者」にする具体例
- 社内プロジェクトへの参加を促す 新しい福利厚生制度の導入や、社内イベントの企画などを、トップダウンで決めるのではなく、社員からメンバーを公募してプロジェクトチームに任せてみる。自分たちで考え、実行した制度やイベントは、社員にとって特別なものになります。
- 業務改善の裁量を与える 「もっとこうした方が効率的なのに…」という現場の声を吸い上げ、改善策の立案から実行までをチームに任せる。自分たちの手で職場を良くしていく経験は、「会社に貢献している」という強い実感に繋がります。
まとめ:「やりがい」は与えるものではなく、育てるもの
社員のエンゲージメントを高めるために、特別なイベントや多額の投資は必ずしも必要ではありません。
- プログレス・プリンシプル: 日々の「小さな進捗」を承認し、実感させる。
- IKEA効果: 社員を「お客様」扱いせず、「一緒につくる仲間」として巻き込む。
大切なのは、こうした日々の小さな仕掛けの積み重ねです。社員一人ひとりの「やりがい」という小さな火を、大切に育てていくこと。それこそが、本当に活気のある強い組織をつくる唯一の道なのかもしれません。